映画日記

第3回 死刑台のエレベーター by ルイ・マル


『J太郎の酔いどれ映画日記』。

初っ端から前編、後編の2部構成という、連載ものにはありえない離れ業をやってのけていましました。。。(笑)
これぞ、このレビューが“酔いどれ”たる所以でしょう。

さて、『2001年』に続く第3回はコチラ。

『死刑台のエレベーター』(監督:ルイ・マル 1957年)

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これまたねぇ、、、良い映画なんですわ。

フランスの鬼才ルイ・マルの長編デビュー作としてはもちろん、いわゆる「ヌーヴェルヴァーグ」の先駆け的な作品として知られていますね。

「ヌーヴェルヴァーグ(新しい波)」…まぁ、よく聞く言葉ですよね。。。そして、、、なんとも妖しげな響きですよねぇ(笑)。

きっと、あなたの周りにも一人や二人いることでしょう。多分、いや、、、絶対に、意味も分からず、雰囲気だけで「ヌーヴェルヴァーグ」を使ってる輩が。

「この作品って、いかにも“ヌーヴェルヴァーグ”って感じだよね…」

は? はっ!? “ぬーべぇるばぁーぐ”って何ですか???
声を高らかに問うてやりましょう。


「ヌーヴェルヴァーグ」。。。


なんやかんやと文献をあさってみると、以下のように解釈することができます。

『文学的要素を多分に含んだ従来の映画を真っ向から否定し、もっと自由でリアルな映像表現を求めた前衛的な映画運動』

まぁ、分かったような分からないような。。。

1950年代末、「映画とは、必ずしもドラマチックな展開や感動的なシーンが必要とされるわけではなく、むしろ無駄な演出は排し、あるがままのものをあるがままに映し出すべきである」という風潮が生まれたわけです。で、それを巷の映画マニアたちが具現化していきます。

ここが大きなポイントで、運動の担い手ってのが映画の現場にいた人たちではなく、むしろ現場とは対極に位置する評論家出身の人たちだったのです。
要するに、血気盛んな映画マニアたちが、あーだこーだと批評しているだけでは我慢できずに、自らカメラ片手に街中を走り回って映画を撮り始めてしまったって感じ。

しかも、世の中がそれを評価し、海外の映画祭などでも取りざたされるようになったのです。で、一気に市民権を得るようになったと。
まぁ、映画マニアのクーデターって感じですよね。

ことの意義はともかくとして、ものすごいエネルギーだなぁと思いますね。


さてさて、前置きが長くなりましたが、今回紹介する『死刑台のエレベーター』は、そんなヌーヴェルヴァーグの“走り”とも言われる珠玉のサスペンス映画なんです。

ストーリー自体は、どっちかって言うと地味だと思います。いや、面白いんですよ。ただ、ものすごい大どんでん返しとか、とんでもないギミックが仕掛けられているわけではないっていう点でね。

=STORY=================================
元軍人で、現在は土地開発会社に勤めるジュリアン(モーリス・ロネ)は、勤め先の社長夫人フロランス(ジャンヌ・モロー)との情事の果てに、邪魔者の社長を殺害してしまう。犯行後、現場に証拠を残してきたことに気づき、慌てて戻ろうとしたジュリアンは、電源を落とされたエレベーターの中に閉じ込められてしまう。しかも、会社の前に停めていたジュリアンの車が若いカップルに盗まれ、別の犯罪を引き起こしてしまうのだった…。
=====================================

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話の筋はシンプルだし、ストーリーテリングが軽妙なので、すーっと入り込めると思います。で、そのままラストまでしっかりと連れて行ってくれます。人間がしっかりと描かれているし、目新しさはないけど観応えありますよ。

ただ、僕個人はストーリーや細かな演出云々というよりも、この作品全体に貫かれているシニカルな雰囲気が好きなんですけどね。
ものすごく醒めてますから。

ものすごーく醒めた瞳で、登場人物の心の“揺れ”をじーっと見つめてるんです。

しかも、突き放すような醒め方じゃなくて、ものすごく格好つけてる感じで醒めてるっていう、、、イヤラシイですな(笑)。

うん、この映画ってとにかく格好つけてるんですよね。
さりげなく格好良いんじゃなくて、ばっちり格好つけたうえで、やっぱり格好良いっていう。
俳優の動きや台詞がどうっていうよりも、作品全編に流れる雰囲気が、確実に格好つけてるんです。

“格好つけ演出”です(笑)。

“格好つけ演出”の典型例が、、、そう音楽です。
『死刑台のエレベーター』の音楽といえば、ご存知マイルス・デイヴィス!

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すごしセンスだなぁ、、、というか、ほんっと格好つけ(笑)。

真面目な話、音楽の使い方が抜群に上手いんですよね。
それまでの典型的な映画音楽とは完璧に別次元の効果を生み出していますから。

興奮、焦燥、緊迫、疾走、愛憎、喪失…スクリーンの中に広がる様々な感情の起伏を、マイルス・デイヴィスのトランペットとモダンジャズの旋律が見事に際立たせてくれるっていう、、、

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オシャレな映画ですよ、まったく。

ちなみにこの“オシャレシネマ”、監督のルイ・マルが25歳の時の作品なんですよね…そして、僕がこの作品を初めて観たのも、25歳の時…

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完全に脱帽ですよ、まったく。


はい。そんな『死刑台のエレベーター』。
格好つけてご覧下さい。

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第2回 2001年宇宙の旅 by スタンリー・キューブリック(後編)


<前編を読む>

「踊る大捜査線」シリーズの本広監督も『2001年』の大ファンである、というところまで紹介した前回。

いやぁ、これはホントに意外でしたねぇ。
だって、本広さんの作品ってキューブリック的な要素ゼロじゃん!(笑)
ましてや、『2001年』なんて対極にあるって言ってもいいんじゃないっすか。

ただ、実は本広さん自身もそのことは意識しているんですよね。
以前にお話を伺った際に、そのことははっきりと意識してましたね。
色んなことを考えて、すべてを受け入れたうえで、ああいう映画をつくってるって。まぁ、“プロ”ですよね。うん。すごいことだと思いますよ。


と、そんな前回の続き。


『2001年宇宙の旅』(監督:スタンリー・キューブリック 1968年)

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後編です。


完全主義者で、細部にまでも徹底的にこだわるスタンリー・キューブリック。
そのこだわり方は半端ではありません。

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分業制が当たり前の映画界において、彼は常に自分の作品に関するすべてを
掌握しちゃいます。企画、脚本、撮影、演出、編集、音楽などはもちろんのこと、
宣伝用のポスターデザインやキャッチコピー、上映劇場の選定、上映方法に至る
までをコントロールしようとします。

日本公開に際しては、日本語字幕を再度英訳し、細部に渡って校正していました。

ちなみに翻訳と言えば、とある作品の日本語訳をめぐって、おなじみ戸田奈津子さんをクビにしてしまったなんて逸話も残っています。。。


とにかく、微に入り細に入り、こだわりまくって映画をつくり続けたわけです。

そりゃ、一本つくるのに何年もかかるわ…って感じですよね。というか、本当にこだわろうと思ったら、それくらいの時間がかかっちゃうんでしょうね。

“日出づる国”には、一年に2、3本撮っちゃう監督もいるってのに。。。
まぁ、これは一概に監督の問題ではありませんが。


ちょっと話がずれましたね。。。


とにかく、こだわりの完璧主義者スタンリー・キューブリック。

この作品でも彼ならではのこだわりやセンスが爆発しています。
ネタばれの恐れもあるので多くは語りませんが、本当にすごいです。
ぜひ、じっくり観て、堪能して頂ければ幸いです。

参考までに、有名なところをちょっとだけご紹介すると、、、

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○モノリスに導かれた猿が骨を空高く放り投げるシーン。
この時の高揚感は尋常じゃないっすね。
このシーンで流れる「ツァラトゥストラはかく語りき」。自らを“野獣”と称する某格闘家さんが入場テーマに使ってますが、、、やめてほしいわぁ。。。(笑)

○ディテールにこだわりまくった宇宙船
この作品では、それまでの幼稚なSF映画を一笑に付すかのごとく、厳密な科学的検証に基づくリアルな宇宙船が登場します。
しかも、オシャレなんだよなぁ。

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当初、宇宙船のデザインをあの手塚治虫に依頼していたというのは有名な話。

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結局、多忙を極めていた手塚さんが断ったらしいけど、もし実現していたら、ものすごいことですよね。うーん、、、残念!

○独創的で革新的な映像技術
キューブリックと言えば、撮影現場において常に独創的で斬新なアイデアや技術を取り入れた、映画撮影の革命家でもあります。
『2001年』で言えば、「フロントプロジェクション」と「スリットスキャン」が有名ですね。
これらの特殊技術が評価されて、第41回米アカデミー賞の視覚効果賞を受賞しています。ちなみに、この年の作品賞は、キャロル・リードの「オリバー!」。
うーん、、、、どうなんだろう。。。まぁ、いいか。。。

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僕自身、この作品はSFというジャンルに限らず、近代映画の概念を大きく転換させた一大エポックであり、映画史に残る不朽の名作であると思っています。

とりわけ、これ以降のSF映画で『2001年』の影響をまったく受けていない作品があるのなら、ぜひ観てみたいと思います。

いや、、、観なくていいか(笑)

ちなみに、かのスティーヴン・スピルバーグ(「インディ・ジョーンズ」シリーズ、「E.T.」「ジュラシック・パーク」etc…)はキューブリックを評して「みんなが彼の映画に憧れ、真似していたけど、彼は誰の真似もしなかった」と語っています。

まぁとにかく、それくらいすごい映画だと思うわけです。

ただし、この映画が面白いかと聞かれたら、「うーん、、、」と首を捻らざるを得ないでしょう。だって、意味分からないから(笑)

でも、この作品は間違いなく「素晴らしい映画」です。

映画についての感想を聞かれる時って、大抵「面白かった?」って言われるけど、それってどうかなと思うんですよね。

「面白けりゃそれでいいのかな?」って。

面白い映画が必ずしも良い映画とは限らないわけだし。


映画には娯楽性と芸術性の両面があって、どちらを重視するかというのは各々に委ねられて然るべきだと思います。

観る側も創る側もね。

ドッカンドッカンやってるだけの超大作とか、単なるテレビドラマの拡大版「○○○○○ THE MOVIE」とか、、、まぁ、ぼけーっと観てる分には面白いのかもしれないし、興行的に成功しやすいのかもしれないけど。。。

たまには、面白いだけじゃなくて、本当の意味でガツンとくる“良い映画”ってやつはどうですか?って思うわけですよ。

観る側も創る側もね。


というわけで、『2001年宇宙の旅』最低3回観ましょう。

うん、観る側も創る側もね。






では、今日もご案内。

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第1回 2001年宇宙の旅 by スタンリー・キューブリック(前編)

『J太郎の酔いどれ映画レビュー』記念すべき第1回。

どの作品について書こうか悩んだのですが、、、ここは、名作中の名作でいきたいと思います。


『2001年宇宙の旅』(監督:スタンリー・キューブリック 1968年)

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はい。これは、もう文句なしでしょ。

「SF映画の金字塔」「前代未聞の実験的映画」「映画史に残る不朽の名作」、、、
賛辞をあげたらキリがありません。

ただ、公開当時はまったく評価されなかったんですよね。


まぁ、時を経て、その素晴らしさが理解されるというのもこの作品のすごさかなと思います。
まったく色あせないてないってことだし。


CGやら何やらがない時代に、こんだけの映像を生み出すなんて…
もはや神。
月のシーンなんかも出てくるのですが、この作品がつくられたのって“アポロ11号の月面着陸より前”なんですよ!この事実って、本当にすごいことだと思いませんか。

そりゃ、『アポロ計画陰謀論』なんてものも生まれるわって感じですよ。


希代のSF作家アーサー・C・クラークの同名小説が原作と思われがちですが、実際は脚本と小説は同時進行で執筆されたそうです。
しかも発表は小説の方があと。つまり、小説が原作ってわけではないんですな。内容的にも差異があるし、映画と小説は別ものとして楽しむことをお勧めします。


さてさて、そんな『2001年宇宙の旅』。


初めて観たのは高校生の頃かな。レンタルビデオで(ちなみに、キューブリックは「ビデオで観た人は感想を語るな」と言っています…先生ごめんなさい)。

はっきり言って、まったく意味が分かりませんでした。。。
ええ、開始10分くらいで寝ましたよ(笑)

いわゆる猿のシーケンス。

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一切台詞がなく、ただただ猿の群れが…完全に不良品だと思いましたから(笑)


2回目、、、30分は持ちこたえかと思います。
しかし、まったく話が飲み込めないまま、あえなく撃沈。


せっかくレンタルしたのに観ないまま返却するのが悔しくて3度目のトライ。
3度目の正直でなんとか最後まで観ました。
感想は、、、やっぱりまったく意味が分からん!!!

ただ、同時に異様な高揚感があったのです。
ある種のトリップというか、「何コレ??意味わかんねー!!
でも、すげーっ!!!なんか、すげーっ!!!」

そんな感じ。

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『2001年宇宙の旅』があなたの感情を刺激し、潜在意識に訴えかけ、
神話的なものへの興味をかき立てたなら、この映画は成功したと言える。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

これはキューブリック自身の言葉ですが、なるほどその通りの状態に陥ったと
言えます。うん、この映画は大成功ですよ。

その興奮が忘れられなかったからかどうかは定かではありませんが、数年後に再びこの作品を手に取ることになります。そして、その時には、過去3回では全く気付かなかったたくさんの発見がありました。


それから幾度となくこの作品を観ていますが、その度に新たな発見、感動、興奮があります。
「やっぱりスゲーなぁ…」って。

要するに、観るたびに変わる映画、観れば観るほど味の出る映画なんだと思います。
そういや、本広克行監督(「踊る大捜査線」シリーズ、「サトラレ」「UDON」etc…)にインタビューした時に同じようなことを言ってましたね。

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ちなみに、本広さんも2001年の大ファンなんだそうです。…意外。


と、一回目から長くなったので、いったん終了(笑)

後編に続く…ってことで。



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